上野駅20番線

20番線から向かいの19番ホームを見る 国鉄色特急電車が花盛りの頃

上野駅の地上の東端にかつて20番線という発着ホームがありました。(現在は地下の新幹線のホームに20番線があり、東北・山形・秋田・上越・長野新幹線用となっている)このホーム(番線)は地上時代ほぼ常磐線の列車専用として使用されていて多くの有名な長距離列車が発着していました。
そのわりにホームの造りは貧弱で偉大な上野駅の隅でなにか「場末」の感がありました。 でもそこに旅情を感じ、早朝に着く多くの寝台特急、日中の普通電車や列車、そして夕方から夜に北国を目指す夜行列車それぞれに味のあるシーンを演出してくれていました。
この20番線を昭和45年以降たまに訪れて記録していたなかでのひとつがこの1978年(昭和53年)冬の情景です。


常磐線225列車の情景

頭端式ホームから列車の方に向かってゆくと多数の乗客や他の列車待ちの人たちで賑わっていた。上野駅おなじみの「移動式売店」も稼ぎ時。

1978年当時、このホームからは常磐線の長距離旅客列車が三往復発着していました。この画像はそのうちの一本、15時22分発の平(現:いわき)行きでこの他に仙台までの221レ(早朝)とお昼過ぎの223レ仙台行そしてこの午後の425レの3本だけとなっていて、いずれもこの20番線から発車していました。

最後尾はスハフ42。このホームの間に合わせにもみえる木組みの柱の造りがまた「場末」の雰囲気を際立たせている。大きな紙袋を両手に持った人などが見える。
発車を待つ長距離鈍行のこの風景は旅情にあふれていた。上野駅ならなおさらその印象が深い。

なお奥の乗車待ち行列札に見えるのは 左から
「16:16発 急行十和田52号 常磐線経由青森行 指定席3号車」
「20:10発 急行十和田1号 青森行 指定席3号車」
「23:30発 急行十和田53号 青森行 指定席3号車」とある。
これから夕刻そして夜行の時間帯は定期のブルートレインや季節・臨時列車も含めて20番線も賑やかな時を迎える。

ホームに漂う煙草の煙、座り込んでの列車待ちの人たち・・・暖かい冬の日差しが425レの客車を彩る。

駅弁販売の売り子さんも出ていた。窓からの買い物もいまは昔となった。
「平 行」の行き先札の上の窓には缶コーヒー、缶ビールに冷凍みかん・・・窓框の定番が並ぶ長距離鈍行。
見送りだろうか、発車までのひとときに窓越しに離す旅人との風景も始発駅ならではの情景だがいまはもうほとんど見られない。
 
「気をつけてねー」の声が聞こえるようなワンシーン 20番線からの旅立ちは想い出をのせて 発車時間が近づく・・・。

列車の出て行った20番線ホームにまた次の列車の乗客が三々五々集まってくる。頭端式ホームが終着駅そして始発駅の風情を一層味合わせてくれていた。線路脇には給水作業を終えた係員、撮影に立った19番線にはゴミ収集のカゴや鳩もおなじみの姿だった。


この20番線は1985年(昭和60)3月14日の東北・上越新幹線の上野延伸開業に伴って廃止されました。(廃止は5月31日)またおとなりの19番線も3年後の7月1日に廃止、さらに18番線も廃止されて地上ホームは17番線までとなってしまいました。(なお18番線は欠番)


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