鉄道雑貨 その1

オートマトン

中央のレバーは「閉塞」の位置(惰行中)になっている

神田の交通博物館に展示されている我が国唯一の「マレー式」蒸気機関車の生き残り9856号であるが、その形態もさることながら実に面白い装置を装備しているので紹介しておきたい。それはボイラーの非公式側の前寄りに見える「弁?」のようにも見える一連の作動装置である。
 これは“オートマトン”と呼ばれており、大正期に輸入されたドイツ製過熱式蒸気機関車の一部に取付けられていたもので、惰行中の過熱管の事故を防ぐための機構という。詳細は専門書などを参考にしていただくとして要は機関車が力行中はその蒸気圧力でオートマトンは過熱ダンパ(煙室内部)を開放の位置にレバーを作動させておき、惰行時はバネの力でレバーを反対の位置に戻して過熱ダンパを閉塞の位置にさせるのである。この扱いはすべて自動で行われるのだが、万一故障した時もキャブから操作できるように作動棒などを併設している。
 資料によればこの機構は蒸気洩れ等の故障も多く、また過熱管の損傷などもそれほどなかったため、いつのまにか姿を消したということである。このオートマトンは9850(1912製)などのほか古い写真などを見ると8850(1911年製)などにも装備した姿が見られるが、現代ではあまり語られない珍しい蒸機の機構であることから紹介した次第。
※「鉄道ピクトリアル」275号(73ー2)『汽車のけむり』 金子 巧氏 などを参考にいたしました。

※9856は現在、さいたま市の「鉄道博物館」に移設されています。



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