汽車の思い出02 木曽路 その3

中央西線1970年 その3

昭和45年12月28日


木曽川橋梁で撮る

駅に戻り山側の斜面へ向かう。まずはすぐにやってくる825レの発車を狙うという算段だ。バックには美濃の山々とダム湖が広がり申し分ない。8時10分、汽笛とともに塩尻行きの客825レが迫ってきた。ドレインを吐き出し煙もあがっている。「いいぞ!」と思ってシャッターを切ったのだが後で見ると御覧の通り。送電を兼ねた架線柱がかぶるところで見事に機関車が隠れ、せっかくの名シーンも失敗作となってしまった。ともかくこんな事ばかりでさすがに初心者の面目躍如?ではあった。

 

↓後追いで鉄橋を渡る列車にカメラを向けたがこちらは光線状態も良く、気持ちの良いものが撮影できた。

825レの後はまたも駅に戻って貨6651レを迎える。山側は陽がのぼったといっても線路は陰になるので相変わらず絞りには苦労する。ここでなけなしのネガカラーに変えたのであるが、やっぱり暗い画像になってしまった。6651レはD51155[中]に後補機がD51279[中]だった。この列車が落合川のホームに入ると反対側にいつの間にか来ていた貨652レのD51849[中]が出発準備をしている。やはり光線状態の良いところで何とかカラーを生かしたい、とお馴染みの川側へ移動し発車を撮ることにした。652レが出る前に下りのディーゼル急行が通過するのでまずはウォーミングアップをする。後追いだったがこの801D「きそ2号」は大馬力機関の試作形式となったキハ91系だったのでこれも貴重な記録となった。この列車が去るとようやく652レの発車となった。結果は上々で、ようやく「まともな一枚」が撮れたような気になった。(「その2」のトップ画像がこの652レの発車シーン)

 
発車待ちの652レ。朝の光がカマに反射する。右は通過の「きそ2号」

652レの手応えに満足しつつ、再び木曽川橋梁へ戻る。ここでの「定番」写真といわれるものは下り線(新しいトラス橋)を対岸から正面がちに捉えたものがよく趣味誌に載っていたので、まずそのアングルからのものをひとつ撮りたいと考えた。お決まり写真ではあるが初心者はまずここから、というわけである。その撮影ポイントに行くにはこの鉄道橋を渡るか(違反だが)、近くに架かる吊り橋を渡って大きく迂回するしかない。車には関係ない場所であるのでけっこう不便なものだと思っているうち汽笛が聞こえてしまった。お目当ての下り貨691レらしい。あわててカメラを構えどうにか間に合ったが、結果別のポイントからの構図となりこれもいいものか、と妙に納得してしまった。

白煙が印象的な691レが行く

ようやく鉄橋の対岸に着き、トンネル手前の崖あたりで列車を待つ。いってみれば「お立ち台」のようなところだが、この日はあまりファンはいなかったはずで人数も覚えていないほどだから落ち着いて撮影が出来た。目の前に鮮やかな塗装の木曽川トラス橋梁、真青色の流れ、右手にはダム湖と吊り橋というなるほど絶好のポジションである。午前中のこの時間はさらに下り列車にとっても順光なのでこれまた条件が良いのであった。少し待つと木曽路のクィーン・181系の11D「しなの」がやってきた。こればかりはSL中心の撮影といってものがすことはできない。特急色が実に美しく、軽い排煙を残して走り去った。

「しなの」の後を追うように15分後の9時50分頃、この鉄橋での本命ともなった下り貨669レがやってきた。補機は切り離しているので単機だが、猛然と吹き上がる煙や川面にこだまする轟音はやはり「蒸気機関車」のもっとも迫力ある美しい姿だと思った。このページのトップ画像がこの669レのものであり、牽引は先程重連旅客の先頭に立っていた495号であった。

この1本がまあまあの感触だったので満足し、橋梁での撮影は終了とした。669レの後に上り線を通過した貨692レが補機連結のために駅に停車しているのが見えるので、もうひと頑張りと発車を撮るべく駅に戻った。D51827[中]牽引のこの列車を撮り終え落合川でのプランは消化した。まだ10時を回ったところだが、もうお腹いっぱいに汽車を楽しんだ気分で「来て良かった!」と感じる瞬間である。待合室に戻りW君とこれからの予定を再検討する。当初の予定ではこのあと11:07の826レで恵那まで行き、明知線のC12をスナップ、中津川へ戻って機関区を見学し再び下って南木曽で降り撮影、そして夕刻木曽福島に出て機関区撮影後、18:40の833レで塩尻へ戻り帰宅列車に乗り継ぐといったものだった。しかし落合川での成果に満足したのか昨夜からの疲れもあってこの計画は少々しんどいな、と目を合わせ、中津川と南木曽はカットして早めに下り列車に乗って木曽福島へ向かうこととした。その後はまた考えようということにして私たちは10:43発の827レ松本行を待つことにした。


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