キャブの情景・製造所銘板編 その6

国鉄蒸機の銘板変遷(概略)


昭和の形式称号改訂(1929)以降における国鉄蒸機製造メーカーの製造銘板の形状や特長などを簡単にまとめてみました。内容については「鉄道ファン」156ー158号(74ー4ー6月号)に連載された「わが製番探訪の30余年1ー3・渡辺肇氏」の記事を参考にいたしました。なお蒸気機関車のみを対象としましたのでその他の車輌での形態の違い、また1956年以降の国鉄指示による「20×30の長方形」タイプは特殊な例を除いて蒸機には装備されなかったと思われますので省略してあります。


汽車会社

創業ー1928 楕円形 円に沿った上部に「KISHA SEIZO KWAISHA」、下部に「OSAKA JAPAN 年号(西暦 例:1912)」 円内上部に製造番号(?○○)、中央に右書きで「社會式株造製車汽」、その下に製造年月が右書き(例:造製年三正大)、その下に製造場所が右書き(阪 大)。
※初期のものは「合資会社」、またローマ字も「KWAISHA」でのちに「株式会社」「KAISHA」となる。

1929以降 楕円形 形態は同じだが字は左書きとなる。

※D51の製造第1号の14号はこのタイプを取付け(現役時は一時外されていたので製造時のものかどうかは不明?) 千葉県流山市に保存 ぎんちゃん御提供

1937年以降 楕円形 東京に移転してから円内上部に2個の円を重ねたコーポレートマークが入り、晩年まで続くオリジナルスタイルを確立。円内上部にコーポレートマーク、中央に「汽車會社」、下に製造年(昭和○○年製造ー和数字)、下段に製造番号(製造番號○○○○ー洋数字)。

戦時中(1941ー1945頃) 小形楕円形

1946ー1956  楕円形

※国鉄工場などでの復興小型銘板は、長方形で表記は「昭○○(洋数字) 汽車」。


川崎

創業ー1928 菱形 1929以前は川崎造船であり、初期の菱形タイプは3種類あった。表記の一例は、菱形内上段に製造年右書き(例:年五正大)、中央に「所船造崎川」、下段に製造所「造製場工庫兵」、最下段に製造番号「?○○ー洋数字」で、機種によっては製造年の下に過熱器付の表示などもあった。

1929ー1941 長方形 上段に製造年(昭和○○年ー和数字または洋数字)、中央に「川崎車輌」(“崎”や“輌”の字体の違いなどあり)、下段に「製造」、最下段に製造番号「?○○○○ー洋数字」の確立されたスタイルで、以後戦時中などをのぞいて一貫してこのスタイルとなった。
※1932ー34製造のものは製造年が洋数字、1946年登場のC59の増備車は製造番号が刻印になった。

戦時中 小形長方形

1946ー1956 長方形(前記のものとほぼ同じタイプ)

※国鉄工場などでの復興小型銘板は、長方形で表記は「昭○○(洋数字) 川車」であったが一部では「川船」などの表記もあった。


日立

創業ー1929 菱形

1929ー1941 長方形(基本はあるがいろいろなタイプがある)
Aタイプ・・・1929ー32 中央に大きく「日立」の文字(やや丸い感じ)、その上に小さなコーポレートマーク、下段中央に「東京 日立製作所」、左右に製造番号と年月(刻印)。
Bタイプ・・・1933ー36 中央左右に大きく「日○立」の文字(やや角形で太くなる)、文字の間“○”の部分に大きなコーポレートマーク、中段に「日立製作所 製造」、下段左に製造番号(?○○ー洋数字)、右に製造年(昭和○年ー漢数字)。
Cタイプ・・・1937ー38 中央左右に大きく「日立」の文字(サイズが大きくなり“立”の上部が横一(“ー”)になりコーポレートマークは消える。下段の中央に「日立製作所製造」、下段左に製造番号(?○○ー洋数字)、右に製造年(昭和○年ー漢数字)。
Dタイプ・・・1939ー41 サイズなどは上記と同じだが下段の文字がやや大きくなり、製造番号と「日立製作所製造」の間にコーポレートマークが復活。
※タイプはこのサイトでの便宜上の分類です

戦時中 長方形

1946ー1956 長方形

※国鉄工場などでの復興小型銘板は、苗穂工場タイプは楕円で「日立」と「製造年」(昭和○○年ー洋数字)、他の小形のものは長方形で表記は「昭○○(洋数字) 日立」。


日本車輌  全体的にデザイン変更は少ない

創業ー1928 円形 二重円の外円部上段にアルファベットで「NIPPON SHARIO KAISHA LTD.」、下段に「NAGOYA(製造所) JAPAN」、内円部中央に「車」を図案化したマーク、上部に製造番号「?○○(洋数字)」、下部に製造年(西暦ー例:1920)。

1929ー1941 楕円形 二重円の外円部上段に漢字で「日本車輌製造株式会社」、下段に製造所(漢字 例:名古屋)、内円部中央に「車」を図案化したマーク、左に「昭和」、右に製造年(洋数字 例:13年)、下部に製造番号「?○○(洋数字)」。

戦時中(1941ー1945頃) 小形楕円形

1946ー1956  楕円形

※国鉄工場などでの復興小型銘板は、長方形で表記は「昭○○(洋数字) 日車」が大半を占める。

例外

戦後製作された樺太(旧ソ連領)向けD51のうち、日本車輌で製造されたこの1号機(新潟県柏崎市に帰還し保存)にはまた異なったスタイルの銘板が取付けられていた。 吉野富雄様 御提供


三菱

創業ー1928   楕円大型 上段に「三菱造船株式會社」次段に「神戸造船所製造」、中央に製造番号「?(洋数字)」、下段に製造年月「元号+年月(和数字)」、中央左右に「三菱」のマーク。

1929ー1941(36頃まで) 長方形Aタイプ 上段に「三菱造船株式會社」次段に「神戸造船所製造」、中央に製造番号「No(洋数字)」、下段に製造年月「元号+年月(和数字)」、中央左右に「三菱」のマーク。

1929ー1941(タイプ2) 長方形Bタイプ 上段左右に「三」と「菱」を分け、中央にコーポレートマーク。次段に「神戸造船所製造」、下段左に製造番号「第(洋数字)号」、右に年月「昭和(洋数字)」。
戦時中(1941ー1945頃) 小形長方形

1946ー1956  長方形Cタイプ 

1948頃から    戦後長方形Dタイプ 上段2段となる。 上段左右に「三」と「菱」を分け、中央にコーポレートマーク。下段左に年月「昭和(洋数字)」、右に製造番号「第(洋数字)号」。

※国鉄工場などでの復興小型銘板は、苗穂工場タイプは楕円で「三菱」と「製造年」(昭和○○年ー洋数字)、他の小形のものは長方形で表記は「昭○○(洋数字) 三菱」が大半を占める。(一部に「三車」や「菱船」なども見られた)

※タイプはこのサイトでの便宜上の分類です

※なお三菱は1931年まで三菱造船、1932年より三菱重工、なお1940年まで神戸造船所製造で1941年から三原工場に移る。戦後一時期三原は「中日本重工(株)」と称する。1952年5月から新三菱重工(株)、1956年に再び三菱重工(株)に戻る。

     

国鉄(鉄道省)工場製

苗穂工場

長方形 上段に「鉄道省」、中央に「苗穂工場」、下段に製造年「昭和○○年ー洋数字」が基本。

復興小型銘板は20×5cmほどの長方形で「昭○○・苗工」と表記(中間の「・」はない場合もある)

土崎工場

長方形 上段に「鉄道省」、中央に「土崎工場」、製造番号・製造年は表記なし

復興小型銘板は20×5cmほどの長方形で「昭○○・土工」と表記(中間の「・」はない場合もある)

郡山工場

長方形 上段に「鉄道省」、中央に「郡山工場」、製造番号・製造年は表記なし

復興小型銘板は20×5cmほどの長方形で「昭○○・郡工」と表記(中間の「・」はない場合もある)

長野工場

長方形 上段に「鉄道省」、中央に「長野工場」、製造番号・製造年は表記なし

復興小型銘板は20×5cmほどの長方形で「昭○○・長工」と表記(中間の「・」はない場合もある)
※なお一部に製造番号も列記した例外もあった。

大宮工場

長方形 上段に製造番号「○○号ー洋数字」(ただし30号まで)、中央に「大宮工場」、下段に製造年「昭和○○年 製造ー洋数字」

復興小型銘板は20×5cmほどの長方形で「昭○○・大工」と表記(中間の「・」はない場合もある)

浜松工場

D51以前は扁平な楕円形

長方形 上段に「鉄道省」、中央に「浜松工場」、製造番号・製造年は表記なし

※1944から楕円形に変わる

復興小型銘板は20×5cmほどの長方形で「昭○○・浜工」と表記(中間の「・」はない場合もある)

鷹取工場

楕円形 上段に「鉄道省」、中央に「鷹取工場」、下段に製造年「昭和○○年ー洋数字」、最下段に製造番号「製造番号○○ー洋数字」(ただし38まで)

※1944から長方形に変わる

復興小型銘板は20×5cmほどの長方形で「昭○○・鷹工」と表記(中間の「・」はない場合もある)

小倉工場

D51以前は扁平な楕円形

やや小形の楕円形 上段に「鉄道省」、中央に「小倉工場」、下段に製造年「昭和○○年ー洋数字」

復興小型銘板は20×5cmほどの長方形で「昭○○・小工」と表記(中間の「・」はない場合もある)


連動コーナー

isobe201様主宰「煙の宴会(うたげ)」資料室「製造銘板」

TADA様主宰の「汽車・電車1971ー」キャブコレクション

画像などで御協力いただいている皆さんのHPです。ぜひのぞいてみて下さい

佐々木様「勝手&気まま 鉄道写真」

ぎんちゃん・ヘロ爺様ヘロヘロSL隊

吉野富雄様五条川鉄道写真館


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