惜別 交通博物館 7 ラスト・ラン

平日も入館者で賑わっている。正面のD51と新幹線にも「さよなら」のヘッドマークやメッセージ装飾が。

2006年になり、いよいよ閉館まで五ヶ月をきった。昨年末から最後のお正月を過ぎると館側もさまざまな「さよならイベント」を企画し別れを惜しむ多くの愛好者や家族連れで連日にぎわいを増してくるようになった。その目玉となっているのが『旧万世橋駅遺構の公開』で、普段未公開の旧万世橋駅の遺構(プラットホームへの通路・階段・当時のままの壁面構造やポスター)を見学できるというもの。5年前の80周年記念でも特別公開されたが今回がいよいよ本当の最後となる。そのため今回はさらに当時の記録映像を見学時に上映したり、旧ホーム上に「まんせいばし」と標記された昔の駅名標(形状や向きなどは一部異なる)を復元し、それをながめられるコーナーを設けたりしてさらに楽しめるイベントになった。そのため予約はもちろん2月以降は連日満員の日が続いている。
 また見学コースとは別にかつての中央入館口に直結していたホームからの階段の遺構(現在の自動販売機と休憩コーナーのあたり)を館内から見ることができるように観覧ウィンドウを設けてある。重厚な石段は小窓からのぞくことができ、ホームに続く階段には当時の「まんせいばし」の駅名標が演出され、仄かな照明に往時の面影が蘇ってくるようであった。
一方この「万世橋」にちなんでの人気が高いイベントは「萬世橋駅」発行の再現硬券乗車券で、毎日先着500〜800名で無料配付、しかも閉館までに5種類を用意するといったもので、これを求めて開館時間前に長蛇の列ができるほどになっている。その他その4でも紹介した神田川沿いの壁面記念装飾の夕方〜夜間のライトアップ、館内での記録写真展示、かつての構内であった引き込み線に特別車両の展示(EF55型電気機関車・寝台特急「出雲」用車両と機関車など)、新鉄道博物館コーナーの設置、閉館記念グッズの販売などなど盛り沢山である。

 
さよならイベント紹介のパンフレットと駅遺構の横をゆく中央線201系(総武線電車の車窓より)

この都心の中にひっそりと埋もれていたかつてのターミナルの遺構、その歴史のひとこまを大勢の人々が感動とともに記憶に留められた事は交通博物館にとっても実に意義あるものになったであろう。できうるならば博物館移転後もこの鉄道文化遺産を何らかのかたちで保存し後世に伝えてほしいものである。

館内から遺構を見る

休憩コーナーからホームへの階段遺構を見る。照明に浮かび上がった駅名板が幻想的
 
休憩コーナー登り口の小窓から見る階段の遺構と説明板

「さようなら万世橋」の文字も入った最近の入館券

 
館内ホールには「85年のあゆみ」の写真が並び、模型運転コーナーでは今日も子供達の歓声が響いていた。

消えゆくものたち

 
街の案内表示や地図からも「交通博物館」の文字は消えてゆく。
横をゆくE257系との出会いもまもなく見納めとなる新幹線の前頭部

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