街道宿場菓子 中山道 その3

軽井沢から本山までの信州十五ケ宿のお菓子とお弁当類です
塩名田宿と菓子

街道歩きや宿場めぐりをしていると、その土地の名産や名物にちなんだものをよく見かけます。その中で私が気づいたのが、かつての宿場内にある和菓子屋さんなどで販売されている「宿場にちなんだ」色々なお菓子です。それは必ずしもその土地や宿場の名物や物産では限りませんが、このページ(中山道編)ではあえて商品名、パッケージ、包装などに「街道」「中山道」「〇〇宿」などの名前が入った銘菓を集めてみました。


ここに紹介したものはかならずしもその土地や宿場時代からの名物を原料にしたり、名産を使ったりしているものではなくても原則としてその宿場の名前を商品名にしたもの(銘菓「〇〇宿」など)、包装紙などのどこかに街道名や宿場名が表記されているものが中心です。(現在は販売されていないもの、またお店がなくなってしまったものも含まれています。)

「 」の名称はパッケージ・包装に書かれているもの 商品名

18 軽井沢宿 

軽井沢銘菓「かるいざわ」包装紙は英泉の浮世絵「追分宿」(木曾街道 追分宿 淺間山眺望)の画

この「かるいざわ」という名の銘菓は菓子自体に「軽井沢宿」をイメージさせるものではありません。製造・販売もお隣の中軽井沢駅前にある「田村屋総本店」なので、「沓掛宿」のものとも言えそうです。さらにこのお店が使用している包装紙が英泉の「追分宿」のものなのでこちらも迷いました。そこでこの浅間根腰の三宿の代表としての軽井沢のお菓子ということでここで紹介することにしました。

軽井沢駅の駅弁

今も賑わう軽井沢の町にはお土産としても数々の和菓子がありますが、中山道軽井沢宿に因んだものはあまりないようです。ここでは国鉄(→JR)信越本線軽井沢駅で販売されていた駅弁を取り上げておきます。

油屋弁当部の「幕の内弁当」の掛け紙

かつて油屋弁当部が軽井沢駅の駅弁を担当していた末期の頃に販売されていた幕の内弁当の中には広重の浮世絵「軽井沢」のイラストが描かれたものがありました。これは「いい日旅立ち」キャンペーンのロゴが印刷されているので1980年代の頃だと思います。(「いい日旅立ち」キャンペーンは1978-11から1984-2頃まで展開)

その内容は典型的な幕の内弁当でシンプルなおかずが並んでいました

軽井沢の駅弁は油屋さんは廃業したのちは、横川の「おぎのや」さんが「峠の釜飯」などを軽井沢で販売しているが、数年前から地元軽井沢の駅前でお蕎麦屋を営業している「高美亭」さんがいくつかの駅弁を販売を始め、軽井沢駅の駅弁が復活した。鶏めしなどの比較的オーソドックスなものだが、箱書きに「軽井沢の駅弁」の表記もありオリジナリティを発揮している。今後も軽井沢ならではの駅弁をぜひ開発・販売してくれるものと期待したい。

高美亭の「鶏めし」 シンプルな内容だが丁寧に作ってある
説明書きには創業明治四十年も老舗の蕎麦屋とある
おぎのや 「軽井沢 峠のおかごむすび」

油屋弁当部が駅弁業者として撤退した後は、軽井沢駅では「おぎのや」さんが峠の釜飯を中心に駅弁の販売を続けていますが、新幹線開業後はほぼ「峠の釜飯」のみの販売になっており、それ以外のオリジナルの商品はイベントなどを除いて見かけることは少なくなりました。これは街道旅の駕籠風の容器に入った「峠のおかごむすび」で、横川でも販売されていましたが基本は軽井沢の駅弁のコンセプトであり、包装には「軽井沢」の文字が入っていました。平成8年(1996)頃の購入。

おぎのや 「軽井沢 幕の内」

また横川駅では販売しない軽井沢駅のみの幕の内 軽井沢」という駅弁を一時販売していたことがありました。街道・宿場・中山道のイメージはありませんが、雄大な浅間山の写真のパッケージが軽井沢を象徴する洒落たものです。


19 沓掛宿 

沓掛宿は現在の中軽井沢周辺ですが、宿場名にちなんだ菓子は少ないようです。その中でこの「沓掛時次郎まんじゅう」は名前に沓掛が入っているので取り上げました。なお販売は佐久市中込にある『モンドウル田村屋』さんです。


20 追分宿 

和泉屋(佐久市)の「軽井沢 しなの追分」

製造・販売は佐久市の佐久平・和泉屋(岩村田商店街)で、追分に居を構えた堀辰雄にちなんだ銘菓として歴史も古く、追分宿升形の茶屋の「升」を商品に焼き付けた模様も宿場銘菓にふさわしいものです。

和泉屋「しなの追分」のしおり(説明)

信濃追分「分かされ」の道標を描いた切り絵の図柄が秀逸です。これはかなり昔のものなので店舗名や所在地など現在のものとは一部異なっています

お菓子の由来などの説明(裏面)

最近の包装状態 追分分か去れのイラストになった 2023年

21 小田井宿 

みよた町『紅谷』の「御代田銘菓 小田井宿」

しなの鉄道御代田駅から旧中山道に出て、少し外れたところにある和洋菓子店『紅谷』さんには21番目の宿場・小田井にちなんだお菓子があります。一つは「御代田銘菓 小田井宿」で、栗入りの水ようかん風のもの。もう一つは小田井宿の別名にちなむ「信州中山道 姫の宿」

雅な包装の「信州中山道 姫の宿」
店舗全景

22 岩村田宿 

特に岩村田宿というものではないが、岩村田の『日野屋』さんが販売していた(と思われる)「中仙道銘菓 浅間山嶺」という最中(見本)


23 塩名田宿

千曲川を控えた宿場・塩名田宿にも小さな和菓子屋さんが健在。「明治神宮献上」の銘菓もある。宿場関連では「中仙道」の名が入っている中山道銘菓「宿場太鼓」、「中仙道千曲の清流」などもありました。

焼印も入った「中仙道宿場太鼓」
現在の千曲川に架かる中津橋のイラストの「信州あさしな 」
小さなお店だがガラス戸に商品名を表示しているので楽しい
「あさしな 稲穂くっきぃもなか

こちらは佐久市岩村田にある『日野屋』さんのもので、包装に「中山道銘菓」の文字が入っている


25 望月宿

「望月 駒の里」

望月宿の宿場名を冠した和菓子はありませんが、宿場を代表していた望月の駒にちなんだものがいくつかあります。喜月堂の「望月 駒の里」「望月の里」などや、木村屋菓子店の「中仙道名物 さとう餅」などがあります。

駒乃屋の「宿場の釜めし」宿場町のイラストが秀逸

このほか望月宿に因んだものとしては駒乃屋の「宿場の釜飯」があります。ただこの商品は現地では製造・販売されておらず、百貨店などでの催事の出張販売専門のものとなっています。一応包装には「中仙道信州望月宿 宿場の釜めし」とありますのでここに掲載しました。

出張販売の店頭の行灯はなかなか風情があった

 茂田井 間の宿 

焼酎「中仙道」 武重酒造

酒類はこのサイトではあえて除外していますが、望月と芦田の間の『間の宿 茂田井』の酒造で造られている焼酎は名称がふさわしいので紹介します。これは『中仙道』と名付けられた焼酎で、茂田井宿の街並み野中にある「武重酒造」のものです。


26 芦田宿 

「信州 立科町 すりおろしりんご」

芦田宿内には洋菓子屋さんなどがありますが、宿場に因んだお菓子などは販売されていないようです。これは宿場内のふるさと交流館などで販売されていた立科町のリンゴジュースです。 。

宿内にある和洋菓子屋「塩菓堂」さんの店頭には「芦田宿 中山道 おやき 塩菓堂」の看板が」

29 下諏訪宿 

下諏訪 新鶴本店の「塩羊羹」(小分け)

29番目の宿・下諏訪には宿場を表したお菓子は特にないようですが、有名なのはやはり新鶴の「塩羊羹」でしょうか。2022年にはこの年開催された(一部は中止)「御柱祭」にちなんだシールが貼られていました。


30 塩尻宿

一誠堂さんの「塩嶺高原 高ボッチ最中」

塩尻宿には宿場をイメージした銘菓はありませんが、一誠堂さんの商品の中に「塩嶺高原 高ボッチ最中」と言うものがあります。「塩嶺」とは塩尻峠のことで、中山道の浮世絵では渓斎英泉が塩尻宿を担当し、「木曾街道 塩尻嶺諏訪ノ湖水眺望」と題していますので、これを代表的な「宿場銘菓」としてもいいかもしれません。

JR塩尻駅から市役所方向に歩いたところにある一誠堂さん

31 洗馬宿 

洗馬宿内で売られていた「洗馬宿 おやき」の看板

現在の洗馬宿内に和菓子屋などはなく、当然宿場名を冠した菓子などもありません。 かつて訪問した際、北国街道との追分近くにあった食品店に「洗馬宿名物 おやき」の看板が出してあったがどのようなものであったかはわかりません。(現在はこの店舗は無くなっています)

 
2014年の「洗馬宿400年祭」の際に洗馬汁として再現された洗馬煮

和菓子ではありませんが、洗馬にはかつて宿場時代に「洗馬煮(せんばに)」という名物があったそうです。現在はなくなってしまいましたが、地元の人たちの努力によって再現されたものがイベントなどの時に振る舞われています。「洗馬煮」はこの洗馬宿周辺で宿場時代の名物として知られ、「せんば煮」とも呼ばれていました。越後方面から送られてきた塩漬けの魚をかつお出汁で煮込んだもので、「洗馬煮は木曽山中洗馬駅に起こる…」との記述もあるらしいものでしたが、明治以降はすたれてしまっていました。それを地元の同好会の方々が資料を集めたりして調理、試食を繰り返し「新・洗馬煮」を再現、この400年イベントでふるまわれました。いただいた洗馬煮は甘塩鮭と大根、ゴボウなどの根菜類をかつお、昆布だしで煮込んだ汁風のもので、あっさりとしていて美味い味でした


32 本山宿

「本山そばの里」で販売の「栗お焼き」

本山宿には和菓子屋さんはありません、したがって宿場に因むお菓子もないのですが「そば発祥の地」だけに「本山そばの里」などでは地元の土産などをわずかですが販売しています。「おやき」は信州の広い地域での名物ですが、「宿場」の文字が入っているものなのでここに掲載しました。


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