街道歩きや宿場めぐりをしていると、その土地の名産や名物にちなんだものをよく見かけます。その中で私が気づいたのが、かつての宿場内にある和菓子屋さんなどで販売されている「宿場にちなんだ」色々なお菓子です。それは必ずしもその土地や宿場の名物や物産とは限りませんが、このページ(中山道編)ではあえて商品名、パッケージ、包装などに「街道」「中山道」「〇〇宿」などの名前が入った銘菓を集めてみました。
ここに紹介したものはかならずしもその土地や宿場時代からの名物を原料にしたり、名産を使ったりしているものではなくても原則としてその宿場の名前を商品名にしたもの(銘菓「〇〇宿」など)、包装紙などのどこかに街道名や宿場名が表記されているものが中心です。(現在は販売されていないもの、またお店がなくなってしまったものも含まれています。)
中山道一番目の宿場、板橋はいまも賑やかな商店街となっています。その中で宿場にちなんだお菓子を製造販売している店舗がいくつかあります。かつての本陣跡の向かいにある『新月堂』さんが代表的で、多くの商品の名称に「板橋宿」の名前が使われていたり、包装などにも宿場の絵図などが使われていてお店の板橋宿に対する深い愛着と街を盛り上げようとする気概が感じられます。
新月堂さんの人気商品はやはりこの「いたばし最中」でしょう。橋をかたどった皮の中にあんがたっぷり入っています。包装も板橋宿の賑わいを描いています。
このお菓子はこれから長い中山道の旅に出る人たちを暖かく送り出すようなまさに、旅立ちのお菓子と言えるでしょう
新月堂にはこの他にも「板橋宿 銘菓 栗まん」、「宿場梅」、「はたごの月」(包装に英泉の板橋宿の画)、「東武道中 むさしの 金澤」 「どら焼」(包装に板橋宿の文字あり)などもあります。
新月堂は常に新しい商品を発売し、またパッケージなども変更しているので目が離せません。「板橋宿」の文字が入ったものはまだあって、こちらの「銘菓栗まんじゅう」や「御成まんじゅう」にも板橋宿の文字が入っています。また包装袋などにも常に板橋や宿場のイメージを描いたものが 使われています。
仲宿にある『とくたけ』さんも中山道にちなんだお菓子を販売しています。蒸しあげている変わったどら焼き「むしどら 中山道」が有名です。また宿内にあった縁切り榎にちなんだ「むすびのけやき 」というものもあります。こちらは「中山道開闢四百年記念菓子」も文字が入っています。
こちらはかつてこの通りにあった『みかわや 』さんが販売していた「板橋宿物語」。 ゴーフル風のおせんべいで包装袋には旅人や駕篭に馬などのイラストと背景に中山道分間延絵図の板橋宿の部分が印刷されるなど宿場を意識したものでした。残念ながらいまはこの店はなくなってしまっていて見ることはできません。
板橋の宿場から若干江戸方に戻るが、巣鴨から板橋の宿場(平尾宿)に入る手前の現在の北区滝野川の旧中山道沿いにも宿場に因んだお菓子を販売しているお店がある。『虎月』さんにはその名もズバリ「板橋宿」というおまんじゅうから当地(滝野川周辺)の宿場を思わせる幾つかの商品があり、いずれも地元愛にあふれたものばかりです。
「一ぷく 栗最中」は説明書に『江戸時代に大名が行き交った中山道 その街道沿いの茶屋で一ぷく 空にはまんまるのお月様 そんな光景をイメージして創られた栗最中…』とあります。
店内にも色々な板橋宿に関する説明やお菓子の案内がある地元に愛されているお菓子屋さんです。紹介したお菓子以外にもずばり宿場の名前を付けた「板橋宿」という薯蕷(じょうよ)まんじゅうがあります。 (薯蕷饅頭とはすりおろした大和芋に砂糖と米粉を混ぜた生地で、餡を包み蒸しあげたもの)
虎月さんでは「中山道 味の史跡巡り」と題して板橋宿と周辺の中山道の名所にちなんだお菓子を紹介しているのも素晴らしく、それぞれ「三軒家」はお店のある滝野川地区の当時の場所の旧称であり、板橋宿(平尾宿)にはいる手前のところだったそうです。「中山道もち」は街道沿いの茶屋をイメージを、御代の台もち」はここの御代の台中通り商店街の名を、「新選組」は近藤勇ゆかりの地の薯蕷まんじゅうを、「一ぷく 栗最中」は中山道沿いの茶屋での一服を、「板橋宿」は板橋宿の入口を表した石碑のイメージのまんじゅうという意味が込められているそうです。
板橋を過ぎ次の宿場は蕨ですが、その間に中山道は荒川を「戸田の渡し」で渡ります。戸田も街道筋で、そこにも中山道に関する菓子を製造販売しているお店があります。戸田市内にある「季乃杜」(ときのもり)では「戸田の渡しのサクサクパイ」という名前の和菓子を販売していて、その包装に英泉の描いた「木曾街道 蕨之驛 戸田川渡場」を思わせるイラストが使われていました。
埼玉県に入って最初の宿・蕨には数軒の和菓子屋さんがあり、大和屋製菓には「中仙道蕨宿」というものがあります。そのほかかつては「郷土銘菓 和楽備本陣もち」というものも販売していました。また蕨宿の通りにある『萬寿屋煎餅店』では一部の煎餅の包装袋に「中仙道蕨宿」や「戸田の渡し」の文字や宿場のイラストが描かれているものがあります。
蕨宿内の本陣跡に近くに店を構える船橋屋さんにはわらび宿」の焼印が押されたどら焼きがあります
また蕨にちなんだ名物を、と近年開発され2019年10月に発売されたお菓子の「わらびの蕨もち」があります。ひとくちサイズの小さなわらび餅で、包装には中山道蕨宿の説明もあります。
通常は蕨駅近くの「WARABI SERECT SHOP」や駅ナカなどで販売されています。1パック4個入り290円(税別)
浦和宿には宿場名などを記したお菓子は見当たりませんが、「浦和宿 本陣もち」を販売していた『菓匠 筑波菓子舗』さんが店名などを変え、「つくば花月庵』として「本陣餅」を販売しています。また調神社にちなんだ「史跡銘菓 御調最中」などがあります。そして和風スイートポテトの「彩の国 浦和ポテト」の包装には中山道の現在の地図のイラストが印刷されています。
浦和駅には今は駅弁はありませんが、ここの名物であるうなぎは市内のお店などで弁当も販売されているようです。中でも毎年「浦和市民まつり」で販売される「浦和のうなぎをそだてる会」のうなぎ弁当は格安で人気があります。シンボルキャラクターの「うな子」ちゃんのイラストが可愛いです。
「大宮宿」を名乗るお菓子はまだ見つかっていませんが、街道を思わせるものとして「大宮銘菓 むさしの道中」という商品があります。
大宮にはかつては地元の業者が駅弁を販売していましたが、今はJR系列の会社の販売のみになっています。大宮宿に関する駅弁は特にありませんが、「大宮」を象徴する氷川神社や盆栽などをイメージしたものはいくつかありました。そんな中で氷川神社を描いた幕の内弁当がありましたので掲載しました。
上尾駅から徒歩15分ほどのところにある洋菓子屋さん「パティスリージュイール」で販売されている、その名もズバリの『上尾宿』というカステラ。包装も味わいがあります。
桶川にはいくつかの和菓子屋さんがあり、それぞれに工夫を凝らした商品を販売しています。そして包装や商品名に「中山道 桶川宿」の文字が入った商品もいくつかあります。『おき川』には栗が丸ごと入った「栗一粒」やごま風味のゆべし餅「中山道中 道しるべ」、『をかの本店』には包装に桶川宿の文字がある「えんぎだいこ」や「桶川宿の紅花」と記されている包装の「桶川宿の紅花 かすてぃら」があります。
「縁起太鼓 えんぎだいこ」 どら焼きですが、ちょっと変わっているのは中身はクリームとうぐいす餡 包装には「桶川宿陣太鼓 えんぎだいこ」と書いてあります
「おき川」の銘菓『姫街道』は包装にはないが貼り出された説明には「中山道」の文字が記されてあった
岡埜本店の「栗一粒」の包装には『桶川宿之 栗ひとつぶ 中山道六十七宿六十九次 日本橋ヨリ六番目ノ宿場也』と記してある
鴻巣宿には宿場名の由来の「コウノトリ」や名産のお雛様などにちなんだ菓子はありますが「鴻巣宿」を名乗るものはありません。鴻巣らしい和菓子を選ぶとすればこの木村屋製菓舗の「おひな最中」が最適でしょうか
このお寿司は鴻巣の箕田にある「福作屋」さんが製造したもので、「花と人形の町・鴻巣」の掛け紙がついたものです。特別のお祭りの日に販売されました。
熊谷宿には 中山道の「中」を形取った中家堂の「軍配せんべい」という有名な銘菓があるのですが、宿をイメージする菓子はなかなかなありません。その中で梅林堂が販売している「和風パイ饅頭 武州路」には特に熊谷宿などの表記はありませんが包装に中山道分間延絵図が描かれており、商品名の武州路も中山道を意味していると思われます。
「中山道 八宿どら焼き」※梅林堂は埼玉県内に多数の店舗がある元治元年(1864)創業の老舗でこの商品の命名については以下のように記してあります。‥‥『中山道の宿場町として栄えた熊谷に店を構え140余年。日本橋から8番目の宿場町が熊谷であったことから名付けられた「八宿どら焼」など、磨き続けた伝統の技と創意で作り上げた美味しいお菓子をご賞味ください。』
「軍配せんべい」を販売している中家堂さん。軍配の中の文字は「中山道」の「中」を表しているそうです。
『菊寿堂(旧名:菊寿童)』の「中山道 深谷の宿」は包装に宿場風景の切り絵イラストが入り、商品自体も宿場の旅籠を思わせる形の凝ったものです。
深谷市岡にある『御菓子司 西倉西間堂』にも深谷宿にちなんだお菓子がありました。銘菓「中仙道 深谷」で、黄身あん入り焼き菓子で包装に宿場風景のイラストが入っています。(当店の最寄駅は岡部駅)
そのほかにも深谷宿の文字はありませんが、当地に因んだ名称のものもいくつかあります。糸屋製菓の「翁最中」、栄寿堂の「みかへり最中」、浜岡屋の「お駕籠最中」などです。
武州最後の宿場・本庄宿には和菓子屋さんが今も多く、それぞれ特徴ある商品を販売しています。その中で本庄・中山道のちなんだ名称の和菓子を探してみたところ、ふくしま製菓舗さんの「中山道銘菓 ふく栗」、「ほんじょう宿場娘」と笹屋さんの「本庄めぐり」がありました。
市内の田村本陣門の近くにある菓子司「せきね」さんが製造販売している『ほんじょうそだち』は洋風の焼き菓子で包装のデザインは今風ですが、セットの箱の包装紙に英泉の本庄宿の画が使われています。本庄駅のインフォメーションセンターなどでも販売中